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多言語話者になるための脳科学的条件 東大教授らがとMITとの共同研究で特定 「誰が」「何時」「何を」習得脳部位は左下前頭回

東京大学大学院総合文化研究科の酒井邦嘉教授らは米マサチューセッツ工科大学との共同研究で、「誰が、何時、何を」習得したかをつかさどる脳部位が左下前頭回であると初めて特定した。

研究グループは、日本語が母語であり英語などの習得経験のある14~26歳の参加者31人に対し、新たにカザフ語の自然習得を模した形で習得させた。その際に、文法的負荷の高い文法課題を解く際の脳内過程について、MRI装置を用いて調べた。

その結果、左下前頭回の背側部の活動が高まるのは、「どのような参加者が(誰が)」、「試行のどの段階で(何時)」、「どの文型を(何を)」習得した時なのかを突き止めることに成功している。

第1、2言語においてこの脳領域が「文法中枢」として機能することは、過去の東京大の研究で明らかになっていた。同じ文法中枢が第3、4言語の習得でも重要な役割を果たすという成果は、多言語の習得効果が累積することで、より深い獲得を可能にするという仮説「言語獲得の累積増進モデル」と一貫している。

東京大の酒井邦嘉教授は「言語の創造的な面から人間の脳メカニズムを解明することを追究し、言語交流研究所は多言語の実践的な活動を通して、世界の人たちとの意義深い交流の実現に貢献していく」としている。