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創発非可換ゲージ上によるマグノン熱ホール効果 東大研究Gが観測に成功

東京大学の武田晃助教らの研究グループは、スピネル化合物絶縁体MnSc₂S₄の反強磁性スキルミオン相におけるマグノン熱ホール効果の観測に初めて成功した。また、起源がこれまで直接観測されたことのない「創発非可換 SU(3)ゲージ場」であることを明らかにした。23日付の英国科学誌「ネイチャーコミュニケーションズ」に掲載されている。

スピネル化合物MnSc₂S₄の反強磁性スキルミオン相において、その複雑な磁気構造に由来する「創発非可換ゲージ場」からマグノン熱ホール効果(熱流が磁場によって曲げられる現象)が現れることを理論と実験の両面から突き止めている。

これまで熱ホール効果の主要因は、通常の磁場と同じ性質を持つ創発型のU(1)ゲージ場と考えられていた。だが今回、新たなSU(3)と呼ばれる創発ゲージ場が、非可換性という量子力学的な性質を示して絡み合うことによって磁気的なキャリアの軌道を曲げる機構を明らかにした。

研究グループは「物質科学における磁気構造のトポロジー効果の解明や磁性を用いた熱流の制御の実現にもつながると期待される」としている。