奈良先端科学技術大学院大学と東北大学の共同研究グループは、硫黄代謝物「超硫黄分子」が、酵母の寿命を制御していることを発見した。酵母の寿命制御機構は、人を含む高等生物に広く保存されていることから、超硫黄分子の利用が老化予防や健康寿命の延長などに貢献すると期待される。
研究グループは真核生物のモデル「出芽酵母」を用いて、超硫黄分子を合成できない変異株を作製。これを詳細に解析した結果、酵母の寿命が大幅に短くなることを発見した。原因を解析したところ、超硫黄分子は小胞体内のたんぱく質の制御に関わる酵素「プロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)」の還元活性に必須であり、小胞体内たんぱく質の品質管理を担っていることが判明した。
また、超硫黄分子はミトコンドリアのエネルギー代謝の維持に関与することも分かった。さらに、超硫黄分子を外部から添加することで、酵母の寿命が延びることも見いだしている。これらから、超硫黄分子は生命の恒常性を維持する上で極めて重要な分子であることが示唆された。
研究グループは「今後は超硫黄分子による寿命制御の基本メカニズムを明らかにし、科学的エビデンスを蓄積することで、超硫黄分子が拓く未来型医療の社会実装へと展開していく」と力を込めている。