宮崎大学の徳本雄史准教授と九州大学の研究チームは、九州山地のシカ不嗜好性植物「アセビ」の繁茂はシカの食害による森林の更新阻害をさらに深刻化する恐れがあることを明らかにした。
宮崎県椎葉村の2エリアでアセビ群落内外の環境と土壌微生物相の比較解析を実施。上層の樹木が落葉広葉樹の箇所でアセビ群落の中の光環境が暗く、未分解のリターとアセビの細根が合わさった腐植層が厚くなっていた。
さらに、土壌真菌類の群集組成を網羅的に解析した。その結果、植物と共生関係を持つ外生菌根菌の存在量が減少していたことが明らかになっている。
つまり、上層が落葉広葉樹の箇所でアセビが繁茂していると、外生菌根菌と共生関係にあるブナやモミなど他の樹種が定着しづらい状況になっている可能性がある。
これはアセビが繁茂することで更新阻害をより深刻化させる恐れを示す。研究グループはこの成果について「シカによる食害後の森林で起きているシカ不嗜好性植物の増加と土壌生態系の関係性やそのメカニズムの理解を促進させ、今後の森林管理や生物多様性保全についての基礎的な知見となる」とコメントしている。