細胞は、接着装置を介して細胞の中の力を細胞外の構造に伝える。特に、アクチン細胞骨格は、細胞内で力を発生しながら動くダイナミックな構造体で、接着装置は多様なタンパク質により構成されるが、動き続けるアクチン構造の動力を、どのように細胞外の構造に伝達するのかはわかっていなかった。
京都大学大学院生命科学研究科の山城佐和子講師、渡邊直樹同教授らは、米国リーハイ大学教授らとの共同研究により、架橋タンパク質が流動するアクチン線維と細胞の足場(基質)の間を繋ぐ過程で、流動力に引っ張られてタンパク質の一部がほどける(アンフォールドする)ことで、流動力を足場に伝達することを明らかにした。
人々の生活するスケールでは、動力は歯車などの固い部品によって伝達される。一方、細胞の中では、伸縮する柔らかい分子が力を伝えていた。もしタンパク質が人間の大きさとすると、流動するアクチン線維は時速50㎞で走る電車に相当するという。この研究では、タンパク質がゴム人間のように伸びながら電車を掴んで地面に力を伝える新しい力伝達様式を明らかにした。