慶應義塾大学とヘルスケア企業「グレースイメージング」の研究グループは、低酸素環境下の運動においてウェアラブル汗乳酸センサーでリアルタイムにモニタリングすることで求められる汗乳酸性閾値(sLT)が、持久力の指標「嫌気性代謝閾値(AT)」として信頼できるとした。
ATを求めるには、高額で大掛かりな呼気ガス分析装置が必要で、解析には専門的な知識を要する。そのため、広くスポーツジムなどに適用することが可能なAT指標の計測手法の開発が必要とされてきた。
両社は20人の運動習慣を持つ大学生を対象に、低酸素環境下で少しずつ増える運動負荷試験中の汗乳酸値の変化をウェアラブル汗乳酸計測機を用いてリアルタイムに評価した。独立した3人の評価者の値が急増する変曲点をそれぞれsLTとして規定した。
その結果、sLTの規定に関して高い検者間信頼性と内信頼性を示した。また、同時に計測して定めた換気性作業閾値(VT)に対して誤差平均秒数が-15.5であり相関関係を認めた。高い妥当性を有していることも分かっている。
研究グループは「低酸素環境下での運動に簡便に実施可能な汗乳酸値計測に基づくsLT 評価を組み合わせることで、個別性に応じた適切な低酸素トレーニング環境を提供し、疾病予防や治療、スポーツパフォーマンスの向上など多様なニーズに応える新たな運動戦略の立案に寄与できる」と評している。