九州⼤学など6機関からなる研究グループは、空間座標の符号を変換する「空間反転対称性」の破れた新規シアノ⾦属錯体K₂MnN(CN)₄・H₂Oを開発した。室温で1.3×10⁻⁵S/cm程度のプロトン伝導体であると同時に従来の1000倍となる15mC/cm² の巨⼤な分極値をもつ強誘電体であることを明らかにしている。
電場で分極⽅向をスイッチすることのできる強誘電体はセンサーやメモリなどに⽤いられる実⽤材料であり、分極値の向上は機能性向上のための根幹をなす重要なテーマだ。そのため無機から有機物質まで幅広く物質探索が⾏われてきたが、それらすべては絶縁体であった。
研究グループは空間反転対称性の破れた結晶構造をもつプロトン伝導体を合成。プロトン伝導の整流性(⼀⽅向に流れやすく、逆⽅向に流れにくい性質)に基づく強誘電的性質を⽰すことを突き止めた。
グループの研究者らはこの結果を踏まえて、「極性イオン伝導体の強相関機能を深めるための合成開発をさらに進めている」としている。