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抗炎症薬に似た分子の医薬応用可能性 東北大助教らが検証 クネアンを新たな生物学的等価体として利用

東北大学の長澤翔太助教らの研究グループは筑波大学と共同で、楔型炭化水素「クネアン」の生物学的等価体としての妥当性を評価。100分の1程度の所望の生物活性を維持することが分かった。対象医薬品および薬効を選定することで、クネアンが新たな生物学的等価体として利用できる可能性を示唆する結果だという。

近年の創薬研究では優れた低分子医薬品の開発を可能にするために、特定の分子構造・官能基と構造的に類似している上に、同等の生物学的応答を有する構造単位「生物学的等価体」が注目されている。

研究グループは、1,3-置換様式を有するクネアン化合物を高効率的に得る有機化学的手法を発見。開発した手法を用いて抗炎症薬「ケトプロフェン」のクネアンアナログ2種の合成に成功している。

合成したアナログの生物活性試験の結果、一方のアナログにケトプロフェンの100分の1の炎症を起こす物質である「プロスタグランジンE2」産生阻害活性を有することが確認された。

ケトプロフェンおよびこれらアナログ間の活性差について解析を行った。標的たんぱく質の活性ポケットにおける結合安定性について評価したところ、ケトプロフェン及び一方のアナログ(アナログA)と比較して、もう一方のアナログ(アナログB)が著しく不安定な結合をしていることを示唆する結果を得た。

長澤助教らは「今後の検討により、薬物動態や他の酵素との選択性などの面で既存の医薬品より優れたクネアン化合物が得られる可能性が考えられる」としている。