東京大学などの研究グループは、脳のはたらきである「実行機能」の発現において、前頭前野だけでなく海馬における新生ニューロンが寄与していることを明らかにした。この成果は認知柔軟性をもたらす神経回路メカニズムの解明につながる可能性がある。
海馬の新生ニューロンは海馬回路に新たな流動性を付与するとともに、複雑な認知機能の発現に貢献していることが分かっているが、実行機能の発現における新生ニューロンの具体的な寄与についてはこれまで不明のままであった。
研究グループは新生ニューロンの機能を、完全ではないが有意に抑えられるモデルマウスを開発。条件刺激と報酬の関係を学ばせる調査を行ったところ、実行機能の1つ「衝動的な行動を抑制し環境変化に柔軟に対する逆転学習能力」が低下していることが分かった。
さらに独自に開発した装置を用いて分析した結果、逆転学習中の海馬局所回路の安定性が低下していることを見いだしている。
研究グループは「海馬新生ニューロン回路を強化することは、これらの実行機能が低下する脳に関係する病気の新しい治療法の開発につながる可能性がある」とコメントしている。