水産研究・教育機構など7機関は、岩手県宮古市など5つの沿岸海域で酸・アルカリ性を通年観測した。研究グループは、液体の「水素イオン指数(pH)」の低下を抑制できる可能性を指摘している。
人類が放出した二酸化炭素を海が吸収することにより、海水のpHが低下していく「海洋酸性化」が世界中で確認されている。海水が酸化すれば貝やウニ、サンゴなどの石灰石の殻が作りにくくなり、生態系に何らかの影響を与えることが懸念されている。
調査によると、5つの海域のpHは生物に危険なレベルではなかったが、降雨などにより沿岸域の塩分が低下した時に、沿岸のpHも10日間程度の間、平均値から外れる現象を1年で数十回の頻度で起こしていると分かった。
貝類の幼生の殻形成に異常が生じるレベルまで低下していたが、顕微鏡観察の結果から貝類幼生で殻に異常が生じた生物は確認されていない。
一方で、5つの海域間の比較からは陸域から沿岸に供給されている栄養塩量が少ないほど、塩分低下時に観察される短期的なpHの低下幅が小さかった。栄養塩が一時的に多くなることにより生物活動が活発化した結果、海域のpHが下がったと考えられるという。
研究グループは「陸域からの栄養塩供給量を適切にコントロールすることで将来の沿岸域におけるpHの低下を抑制できる可能性が示された」としている。