岡山大学の甲賀研一郎教授ら研究グループは、箱に球が詰め込まれたときの配列「最密充填構造」の氷がナノチューブ内では存在できることを、分子シミュレーションで明らかにしている。
基本的に金、銀、銅など多くの固体での原子配列は最密充填構造であるが、水は高圧条件下でその構造にはならない。この理由は、水分子が近接する4分子との間で4本の水素結合を形成する「氷の規則」を優先するからだと理解されてきた。
だが、今回の研究で円筒状のナノチューブ内にある水は高圧条件下で自発的に最密充填構造をもつ結晶に変化することが示された。圧力、温度、チューブ直径を変えることにより、螺旋(らせん)状あるいは直線状に分子が並ぶさまざまな最密充填構造の結晶性の個体が現れるという。
今回の研究によってナノチューブ内で「氷の規則」と「最密重填」の2つの相容れないと思われていた条件を同時に満たす氷が存在すると判明した。
甲賀教授は「分子動力学シミュレーションと呼ばれる手法を用いて、ナノ空間内部の水が新しいタイプの氷に変化することを見いだした。今後、ナノチューブ内の最密充填氷が実験により確認されることを期待している」とコメントした。