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赤外光で単一たんぱく質を確認 自然機構分子研助教らが新技術開発 ナノ物質への応用が期待

自然科学研究機構分子科学研究所(IMS)の西田純助教らの研究チームは9日、ナノメートルスケールの空間に閉じ込められた光を用いる「近接場顕微分光」の計測技術によって単一のたんぱく質を観察し、さらに化学分析として有用な赤外振動スペクトルを測定することに成功したと発表した。

近年のナノテクノロジーの急速な発展に伴い、赤外光を用いた超高感度・超解像イメージングへの需要も高まっている。だが、通常の赤外光を用いた顕微分光では、極微量試料の計測やナノメートルスケールの空間分解能を達成することはできない。

研究チームは今回、たんぱく質複合体「F1-ATPase」に含まれる単一たんぱく質を金基板に単離し、赤外近接場顕微分光の測定を大気環境で行った 。その結果、たんぱく質の赤外振動スペクトルを取得できることを実証した。

単一たんぱく質の計測はたんぱく質複合体や膜たんぱくなどの高度な機能の解明において重要な技術。加えて、研究チームはナノ空間における高度に局在した赤外近接場とタンパク質の相互作用を記述する理論的な枠組みを構築し、得られた信号を定量的に再現することにも成功した。

西田助教らは「赤外光を用いた超高感度、超解像イメージングの技術革新に向けた進展と、生体分子の化学分析をはじめとし、さまざまなナノ物質への応用が期待される」としている。