大阪大学の研究グループは、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンで用いられるSARS-CoV-2ウイルスのスパイクたんぱく質受容体結合ドメイン(S-RBD)が、ウイルス応答に関わる翻訳後修飾である「ISG化」を促進させることを見いだした。S-RBDたんぱく質がヒト心筋細胞に炎症反応を引き起こすことを証明している。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するmRNAワクチン接種後に心筋炎の発症リスクが増加することが報告されているが、そのメカニズムは未だ解明されていない。
研究グループは、mRNAワクチンから産生されるSARS-CoV-2ウイルスのスパイクたんぱく質受容体結合ドメイン(S-RBD)がiPS細胞から分化した心筋細胞に与える直接的な影響を検証。
ゲノム編集技術を用いてSARS-CoV-2ウイルス受容体である「ACE2」をノックアウトしたiPS細胞を作成することでS-RBDがACE2を介してヒトiPS細胞由来分化心筋細胞に取り込まれることが分かった。
研究グループは、取り込まれたS-RBDが心筋細胞に与える影響を検証するために、S-RBD投与後の遺伝子発現変化を1細胞ごとに網羅的に定量する解析を行った。すると、成熟心筋細胞において、インターフェロン応答遺伝子の発現が上昇しており、ISG15を介した翻訳後修飾であるISG化を促進することが明らかになった。
研究グループは「研究は、S-RBDたんぱく質自体がヒト心筋細胞に炎症反応を引き起こすことを証明した」とコメントしている。