東京大学の大森良弘准教授らによる研究グループは12日、イネ転写因子「OsbZIP1」遺伝子が栄養利用、吸収効率を制御することを米の品種「ひとめぼれ」を使った研究により明らかにしたと発表した。英学術雑誌「ザ・プラントジャーナル」で掲載されている。
窒素とリン肥料の原料には限りがあり、どちらも地球環境問題となっている。また肥料価格の高騰もある。これら問題を解決した作物生産のためには、肥料要求量少ない品種の開発が望まれている。だが、低肥料耐性を示す系統の報告は多くはない。
研究チームでは低肥料耐性品種の作出のための育種素材の探索を行った。米の品種「ひとめぼれ」の変異体集団から、低栄養条件で初期生育が優れた系統として「88n」を同定。遺伝子地図を基に目的遺伝子を特定する「ポジショナルクローニング」で、その原因遺伝子が「OsbZIP1」であることを明らかにした。
研究で発見した遺伝子を改変することで、「リンの吸収効率が上昇」「窒素利用効率の拡大」「単位面積あたりの穂の重さの増加」などの効果が見られると分かっている。