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大腸菌排除の起点となる細胞 京大研究Gが発見 細菌を排除するための免疫反応の解明に期待

京都大学の廣田圭司准教授らの研究グループは腸管病原性大腸菌の排除の起点となる炎症性サイトカインの1つの「インターロイキンー23(IL-23)」を産生する樹状細胞の一群を発見した。腸管に感染した細菌を排除するための詳細な免疫反応を解明することが期待されている。

腸管病原性大腸菌は、腸炎の原因菌の1つであり、日本でも乳幼児の集団感染が報告されている。だが、腸管病原性大腸菌の排除メカニズムの全容は明らかになっておらず、特にどのような細胞が病原菌を認識し、排除の反応を開始するのかは分かっていなかった。

研究チームは腸管病原性大腸菌に対する免疫応答の起点となるサイトカインIL-23に注目。このサイトカインを作れないマウスはこの病原菌を排除できず、感染による症状が重症化することが判明している。

IL-23を産生する細胞を可視化するツールであるIL-23レポーターマウスの作成に成功した。このマウスに腸管病原性大腸菌を感染させ、どのような細胞がIL-23を産生しているかを解析。その結果、腸管の免疫細胞のうちIL-23産生に特化した樹状細胞の一部を発見することに成功した。

IL-23産生樹状細胞の分布を調べたところ、その大部分は腸管関連リンパ組織に存在することが分かった。この結果は腸管病原性大腸菌を排除する起点として腸管関連リンパ組織が重要な免疫器官であることを示している。

研究グループはNotch2及びビタミンAによる刺激がIL-23産生樹状細胞の発生に重要であると仮説を建てた。検証するために、それぞれのシグナル経路を遮断。IL-23産生樹状細胞の発生に影響があるかを調べた。Notch2が遮断されたマウスでは、IL-23産生細胞を含むEpCAM・DCIR2共陽性の樹状細胞がほぼすべて消失していた。

一方でビタミンAシグナルが遮断されたマウスでは、EpCAM・DCIR2共陽性の樹状細胞は正常通り存在するものの、これらの細胞のIL-23産生能力が著しく低下した。

研究グループは「腸管病原性大腸菌の排除の起点となるIL-23産生樹状細胞の分化にビタミンAの代謝物が非常に重要である」と説明。「これは、大腸菌感染に対するビタミンAの重要性の一部を説明する成果である」としている。