北海道大学の古屋正人教授らは、1800年代から観測され続けてきた自転軸の揺らぎの一種「チャンドラーウォブル(CW)」が観測史上初めて2015年以降に消失していたことを発見した。
CWは地球の固有振動の1つで、何らかの励起源がないと観測されない。90年代末まではその励起源が謎であったが、2000年代初め以降には大気と海洋の全球的な変動が励起源であると認識されていた。
なぜ観測史上初めて励起されていないのかを、大気、海洋、陸水の全球データを用いて分析した。すると、気象庁とヨーロッパ中期気象予測センター(ECMWF)の独立な全球大気データに基づいて推定した大気の寄与が、ほぼ同様に2015年以降に小さくなっていることが判明した。
CWの励起過程はランダムなものと従来は考えられてきたが、これは大気水圏変動の総和が偶然打ち消しあったわけではないことを示す。
研究グループは「今回発見された『CWの消失』は誰も予測できなかった。このことは我々のCWの理解に限らず、地球表層流体への理解もまだ不完全であることを示す」と表現。「大気の寄与がなぜ2015年以降に小さくなったのか、どのような大気大循環場の変化と関連づけられるかは今後の詳細な研究が必要」とコメントしている。