東京農工大学と三重大学のグループは、アルツハイマー病の原因物質である「アミロイドβ(Aβ)」が人工細胞膜中で毒性を持つ構造に変化する様子をリアルタイムに観察することに成功した。アルツハイマー病の治療法開発に有用な知見となることが期待されている。
研究チームはまず、チャネル電流計測によって、Aβモノマーが脂質膜(人工細胞膜)中で凝集してチャネルを形成していく過程の観察を試みた。Aβと脂質膜の相互作用によって流れるイオン電流を電流シグナルとして観測している。
同モノマーと同オリゴマーでは電流シグナルの特徴が異なるため、Aβの膜中でのチャネル形成を電流シグナルの変化から確認。モノマーを用いてチャネル電流計測を行ったところ時間経過に伴う変化が見られ、膜中でモノマーが凝集してオリゴマーとなりチャネルを形成することを発見した。
研究グループは「研究により、チャネル電流計測によってAβと人工細胞膜との相互作用を観測し、凝集の過程を観察できることが明らかになった」とし「Aβと神経細胞膜との相互作用の解明が進み、アルツハイマー病の治療法開発に貢献できる」と説明している。