広島大学のハンス・ジョンティ研究員らの研究グループは、量子逆説「量子チェシャ猫」が文脈依存によって成立する逆説であることを理論的に示した。さらに実証に必要な実験方法も明らかにしている。
これまで、量子チェシャ猫逆説は量子的な粒子とその属性が分離してそれぞれ異なる経路を移動することが、物理的実体であるとの誤解を与えかねない状況にあった。研究チームは、その原因は測定に応じて対象となる量子系が変わる性質にあると解明。実際の物理的状況を示しているわけでないことを理論的に示した。
ハンス研究員らは「文脈依存性は多くの量子逆説の原因となっている可能性がある」と説明。「今後は量子逆説を文脈依存性から統一的に調べることによって、スパコンを凌ぐ量子計算のような古典的現象を超越する量子技術の可能性を最大限に引き出すための知見が得られることが期待できる」としている。
※ 量子逆説:正しそうな仮定と妥当な推論から導かれる結論とは異なる奇妙な結論を与える量子的性質のこと。量子力学の物理的理解を深めるために、多くの量子逆説が提案されている。量子チェシャ猫はその1つ