京都大学野生動物研究センターの松田一希教授らの研究グループは、ボルネオ島の固有種「テングザル」は霊長類では極めて珍しい、父系的な基盤を有する重層社会を形成している可能性を指摘した。これは人類の社会進化を考える上での重要な手がかりになるという。
人は家族という群れで学校や地域、国などという集団を形成して何層にも重なる社会を形成している。一方で、人に最も近縁である大型類人猿でさえも、そうした重層的な思考は困難であると考えられてきた。だが、テングザルなどのオナガザル科系統のみそうした社会ができていると知られる。
チームの調査によって、テングザルはオス1頭と複数頭のメスやその子どもから成るハーレム型の群れを形成して行動することで高次の社会コミュニティーを作っていると明らかとなった。また、メスは近い距離と遠い距離を分散する傾向がある一方で、オスは比較的狭い範囲にとどまる傾向が分かっている。
こうした結果から、テングザルは霊長類では極めて珍しい、オスを基盤とした重層社会を形成している可能性が示唆されるという。
松田教授は「私たち人を理解するためのパズルのピースが次第に組み合わせっていくことにワクワクする」とコメント。「地道な研究の積み重ねが誰も想像し得ない、鼻を明かすような面白い発見につながるのかもしれない」としている。