■研究のポイント■
◎窒化ケイ素セラミックスの製造プロセスの違いが与える影響を専⾨家の知⾒により数値化
◎百程度の少ないサンプルで熱伝導率を⾼精度に予測するAIを開発
◎パワーモジュールに⽤いる絶縁放熱基板の開発を推進
国⽴研究開発法⼈産業技術総合研究所(産総研)の研究グループは、使⽤原料の種類・成形⽅法・焼結条件などの製造プロセス情報を⽤いて窒化ケイ素セラミックス焼結体の熱伝導率を⾼精度に予測する⼈⼯知能(AI)技術の確⽴に成功した。
■不純物量「0.01%以下」にする必要
同材料は電⼒の変換と制御を⾼効率で⾏う次世代パワーモジュールに搭載される絶縁放熱基板への使⽤が期待されている。パワーモジュールは、自動車や鉄道のモーター駆動制御、太陽光発電などでは、電気の直流から交流への変換やモーターの回転数の制御など電気制御を実施するために使用されている。
絶縁放熱基板に⽤いられる窒化ケイ素セラミックスには⾼い熱伝導率が求められ、製造には、原料に含まれるわずかな不純物量(0.01%以下)にも配慮した⾮常に複雑で⾼度なプロセスが必要となる。
この製造条件の複雑さから、製造した窒化ケイ素セラミックスの熱伝導率の予測は極めて困難だった。
こうしたなか、産総研研究グループは、今回、窒化ケイ素セラミックスを製造する際に使⽤する原料粉や添加粉の種類や割合、焼結助剤の種類や添加量、窒化条件、焼結条件などの情報を、産総研中部センターが⻑年をかけて蓄積した同材料の熱伝導率に関する研究知⾒を組み込んだ形でAIに学習させることで、これら製造プロセスの情報から熱伝導率を⾼精度に予測するAI技術を開発した。
この技術の⼀部は、12⽉19⽇に「Ceramics International」誌に掲載された。
この研究は産総研マルチマテリアル研究部⾨の古嶋亮⼀主任研究員、中島佑樹主任研究員、福島 学研究グループ⻑、周 游主任研究員、⼤司達樹招聘研究員、平尾喜代司招聘研究員により行われた。