京都大学の村山美穂教授は、絶滅危惧種「アジアゾウ」のDNAメチル化率から年齢を推定する手法をコストパフォーマンスの高いメチル化感受性高精度融解分析(MS-HRM)を使用して開発した。
アジアゾウのように60~80年の長い寿命を持つ種では、未来の個体数を予測して個体数の回復を計画する際に、信頼性の高い年齢推定が不可欠。アジアゾウのこれまでの報告は、高コストな測定機器を使用し、長時間かかる方法であった。研究グループは、MS-HRMによる低コスト、短時間にできる効率的な方法で、年齢推定に取り組んだ。
年齢推定を行うためには実年齢の分かっている固体から血液を採取し、抽出したDNAのメチル化率を測定しなければならない。25頭のアジアゾウから53の血液サンプルを収集した。
血液サンプルからDNAを抽出し、2つの遺伝子領域(RALYL、TET2)においてMS-HRMを用いて、メチル化率を測定した。すると、2つの遺伝子領域から得られたメチル化率と実年齢の間には相関関係が確認された。構築した年齢推定モデルは、アジアゾウの 60年程度の寿命に対して、平均7歳程度の誤差(寿命の11%)であった。
グループの新井花奈大学院生は「今後は、このメチル化を健康やストレスの指標としても活
用することを探求していきます。このような知見を積み重ね、アジアゾウの未知の領域に踏み込み、共存への新たな道を切り拓いていきたい」とコメントしている。