量子科学技術研究開発機構(QST)の研究チームは、セロトニンシステムの不調がやる気を低下させる仕組みを特定した。うつや意欲障害の原因理解や改善法を把握するための重要な手掛かりとなりそうだ。
セロトニンは気分や覚醒リズムに関わる重要な脳内の神経伝達物質だ。この不足はうつ病などで不安や意欲低下が生じる原因のひとつと考えられている。だが、セロトニンの不足によって意欲低下が生じる詳しい仕組みは分かっていなかった。
研究グループは先行研究で、PET検査を用いて決めた量の薬剤をサルに投与して、セロトニンによる意欲低下の要因を探った。その結果、サルの脳内セロトニンレベルを下げると報酬期待による意欲生成が低下し、報酬の大小に関わらず「行動をしたくない」という反応が増えることを発見した。
QSTは「これらの知見は、うつなどの精神疾患の患者でよく見られる『よりコストを感じて行動することが億劫になる』といった意欲障害の脳メカニズムを理解する上で重要な手がかりであり、新しい治療法の開発につながることが期待される」としている。