広島大学の森山教洋助教らの研究グループは、独自に開発した「オルガノシリカ膜」を用いて燃焼排ガスから水蒸気を回収するシステムを提案した。今後、工業地帯から白煙が立ち上る光景を目にする機会は少なくなるかもしれない。
水やエネルギーの有効利用は世界的な課題だ。特に水蒸気の持つエネルギーは大きく、開発プロセスの中のエネルギーロスの多くは水蒸気に起因する。水蒸気を回収した熱と水の再が期待されるが、現在は一部のプロセスで実現されるにとどまる。水蒸気のみを透過させる分離膜は知られているが、水熱安定性に課題があった。
システムでは膜を介して極めて純度の高い水蒸気が回収され、潜熱利用後に液体となった水が噴霧水として再利用できる。導入により施設外部からの水供給が不要となるため、近くに水源がなくても運転することが可能だ。
模擬ガスにより膜の水蒸気回収試験を半年以上行って、膜の水熱安定性を確認した。150度以上の水蒸気に対する安定性としては世界で最長であるという報告をしている。
研究グループは「火力発電所や化学プラントなど、水蒸気を大気に排出しているあらゆる排出源への導入も可能となる」とコメントしている。