名古屋大学の佐々木武馬助教らの研究グループは、情報・システム研究機構など5機関の共同研究により、植物の水の輸送路である道管の形成に必要な新たな機構を突き止めたと発表している。真核生物に存在する微小管の制御機構の解明に貢献しそうだという。英科学誌「ネイチャー・プランツ」に同日付で掲載されている。
研究グループは、道管を構成する細胞において、MIDD1たんぱく質が微小管の局所的な配置に関与していることを明らかにしていたが、その詳細なメカニズムは不明であった。研究では、細胞が管状要素に分化する過程での同たんぱく質の挙動を詳細に解析した。
シロイヌナズナの道管において同たんぱく質が液―液相分を介して凝集体を形成し、細胞壁形成の足場となる微小管を分解する機能をもつことを突き止めた。このたんぱく質の機能が細胞壁の形成を局所的に抑制することで、道管の水の輸送路を確保していることも明らかにしている。
研究グループは「たんぱく質が液―液相分離を介して微小管を脱重合する機構は、これまで真核生物で広く研究されてきた微小管の制御機構の中でも例がなく、微小管の制御機構の解明に大きく貢献する知見だ」と評価している。