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肝臓の中に胆管ができるメカニズム 筑波大教授が解明 人工臓器の開発に寄与

筑波大学の高橋智教授は肝臓の中に胆管ができる仕組みを解明した。この発見は人工臓器の開発にも貢献する可能性がある。「今後、Notchシグナルの肝臓内での分布様式を遺伝子組み換えマウスを用いて実証することを計画している」と意気込んだ。

研究では胎児の肝臓の公開データを解析した。胎児の肝臓を構成する主要な細胞は「門脈細胞」、「肝芽細胞」、「造血細胞」の3種類。大人の赤血球は骨髄で作られるが、胎児は肝臓で作られている。

これらの細胞が細胞の運命を決める「Notchシグナル伝達経路」の構成要素として働く能力を調べたところ、門脈の細胞だけが、リガンドと呼ばれる門脈細胞から出た分子であるたんぱく質「JAG1」を発現してシグナルを送る能力を持っていた。

また、受容体「NOTCH1」や「NOTCH2」を発現してシグナルの受け手となる能力を持つ細胞は肝芽細胞に限られた。造血細胞はどちらの能力も持っていなかった。

これらの結果は、門脈に沿って存在する肝芽細胞はNotchシグナルを受け取って胆管上皮細胞に分化する一方、門脈から離れた場所には造血細胞や肝芽細胞が障壁となってシグナルが伝わらず、胆管上皮細胞への分化が起きないことを意味する。

高橋教授は「この研究の結果は、数理解析で得られたNotchシグナルが限局する条件に一致しており、これまでの数理解析結果を分子生物学的に裏付けるものとなった」と説明している。