文教速報デジタル版

BUNKYO DIGITAL

文教速報デジタル版

BUNKYO DIGITAL
ニワトリのES細胞の維持に重要なシグナル経路 広島大教授らが特定

広島大学の堀内浩幸教授らの研究グループは、シグナル経路「Wnt/β-カテニンシグナル」伝達の活性化が、ニワトリ胚性幹細胞 (ニワトリES細胞)の分化を促進する。一方で、シグナル伝達の阻害が、多能性維持に重要であることを明らかにした。研究で得られた知見は、鳥類幹細胞研究のさらなる発展に期待が寄せられている。

マウスES細胞では、Wnt/β-カテニンシグナル伝達の活性化が、ES細胞の性質を維持したまま増殖させることをサポートする。だが、ニワトリES細胞に対するWnt/β-カテニンシグナル伝達の活性化や阻害の影響は、解析されていなかったため研究グループはこの影響を調べた。

その結果、Wnt/β-カテニンシグナルを強めると、細胞が平らな形態へと変化し、多能性に関与する遺伝子発現の低下が見られた。この条件で培養されたニワトリES細胞は、移植先の胚体に一部を分化する「キメラ形性能」を示していない。

一方、Wnt/β-カテニンシグナルを阻害すると、細胞はコンパクトな形態へと変化し、多能性関連遺伝子の安定した発現が起きた。さらに、この条件で生産されたニワトリES細胞は、培養初期に安定的に増殖している。キメラ形性能は生じなかった。

研究グループは「Wnt/β-カテニンシグナルの調節機構は、ニワトリと哺乳類ES細胞間で明確に異なっており、ニワトリES細胞の極めて興味深い特徴であることが分かった」と表現。今後について「最適化された培養系で培養されたニワトリES細胞の分化能をより詳細に評価する」としている。