神戸医療産業都市推進機構(BRI)は、血液・腫瘍研究部の井上大地部長が、造血と白血病を制御する未知の機構を解明したと発表した。遺伝子BRD9が造血に重要な役割を果たし、白血病治療にも有用であるとしている。
研究グループは、血液がんを中心にBRD9がRNAレベルで分解される現象を捉えてきたが、BRD9の生物学的な役割についての理解は不十分であった。
それらを明らかにするための研究を実施した。そこではマウスの造血幹細胞でBRD9喪失させると、ノックアウトマウスは人と同様に長期間かけて血液がんを発症した。
BRD9はクロマチン構造の制御において重要な役割を果たしており、BRD9が喪失した条件では構造の違いによって遺伝子発現に変化が生じ、正常な分化機構に異常をきたすことを発見したという。
一方で、BRD9を阻害することにより急性骨髄性白血病細胞の分化を誘導できることから、短期的なBRD9阻害は白血病治療に有用であるという知見を得ている。
研究グループは「これらの結果により、正常造血におけるBRD9遺伝子の重要性をクローズアップするだけでなく、骨髄異形成症候群など増加の一途を辿る血液がんにおいてRNAレベルで発現制御される遺伝子が主要な役割を果たしていることを初めて証明した」と説明している。