京都大学などの門脇浩明特定准教授らのグループは、防鹿柵による植生の維持が土壌細菌・真菌の多様性を守ることにつながると発見した。アーキア(古細菌)や担子菌類などの一部の微生物群の多様性を維持する効果があるとしている。
土壌微生物群集がシカによってどのような影響を受け、どのすれば保護されるのかを理解することは極めて重要だ。が、シカによる食害が土壌微生物の多様性にどのような影響を与えるかはこれまで明らかになってこなかった。
シカが排除された区域と隣接する食害が続く地域を比較したところ、アーキアと担子菌類の種数はシカ排除区の方が対照区よりも多く、細菌と子嚢(しのう)菌類についてはそのようなパターンは見られなかった。
また、多様性の違いに加えて、土壌真菌群集を動物病原菌や菌根菌、腐生菌といった生態系での機能の観点で分類したグループに分けて調べると、排除区よりもそうでない区において動物病原菌グループの存在量が多くなることが発見された。
研究グループは「防鹿柵が土壌微生物群集に及ぼす影響は、微生物のグループごとに異なる複雑な反応によって特徴づけられる。だが、研究ではシカの食害を防ぐことで、土壌微生物群の多様性を守ることができる可能性を示唆している」と説明している。