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計算様式「神経活動正規化」に基づく新たな運動学習モデルを考案 東大研究G

東京大学の牧野勇登大学院生らによる研究グループは、視覚誤差情報に基づいた運動指令の修正が、脳神経回路に普遍的に観察される「神経活動正規化」と呼ばれる計算様式に基づいて行われるという運動学習モデルを提案。実験結果がモデルの予測に良く合致することを明らかにした。

研究では、被験者はロボットアームのハンドルを操作し、標的に向かってカーソル(視覚情報)を動かす運動を対象とした実験を実施。運動中に、誤差を加えた視覚情報を複数個同時に提示させたとき、次の試行で生じる運動指令修正量を調査した。

2つもしくは3つのカーソルを同時に呈示した際の修正量を調べたところ、その誤差の組み合わせに複雑に依存した変化パターンを示した。統計量に基づいて視覚誤差を推定する従来のモデルでは、この複雑なパターンを説明することはできなかった。

だが、複数のカーソルそれぞれによって伝達される誤差情報が神経活動正規化則によって統合され修正量が定まる数理モデルを構築したところ、その複雑なパターンを忠実に再現できることが明らかになった。

研究グループはさらに、正規分布に基づいて生成された視覚誤差を5つのカーソルで与えた場合、修正量が誤差情報の平均値と分散値にどのように依存するかを新しいモデルによって予測。

修正量が誤差情報の分散の増大とともに低下するという従来よく知られた現象を予測するばかりでなく、この低下の度合いが誤差情報の平均値に依存するという予測が得られ、実験結果ともよく合致した。

研究グループは「運動学習システムが不確実な感覚情報をどのように活用して運動指令を修正するかという問題に対して新たな計算モデルを提案した点で高い重要性を持つ」と評価している。