広島大学の服部登教授らのグループは、「HIF-1が間質性肺炎による肺がんの進行を調節すること」を発見。そのメカニズムについて新たな知見を得た。この研究成果は間質性肺炎合併肺がんに対する治療の発展に大きく貢献すると期待されている。
研究グループは「間質性肺炎モデル」と「がんを肺に移植するモデル」を組み合わせた間質性肺炎合併肺がんマウスモデルを初めて開発した。間質性肺炎合併肺がんモデルでは、がんの周りに集まる細胞が変化しており実際の患者と同様にがんが早く大きくなること、転移を起こすようになることが確認された。
その理由を探るため、遺伝子の発生量を解析する「RNAシーケンス」を行い、肺がんと間質性肺炎の両方でHIF-1シグナル伝達経路の活性化が関わっていることを明らかにした。
この結果をもとに、間質性肺炎合併肺がんモデルにHIF-1阻害薬を投与すると肺がんも間質性肺炎も進行しなくなることが分かったが、阻害薬は心臓や血管にダメージを与えることが判明しており、実際に患者さんに使うことはできない。そこで、その代わりとなる薬としてHIF-1の分解を助けるビタミンCに注目した。
研究グループは「今後はさらなる治療の標的を探索することや、アスコルビン酸治療の臨床への応用が期待される」とコメントしている。