東京医科歯科大学の渡部徹郎教授らの研究グループは、東京大学などと共同研究でがんの進展に関与する内皮間葉移行の中間段階を検出できる実験系を開発した。これを踏まえた新たながんの治療法の開発が期待されている。
研究グループはがん微小環境で豊富に存在するトランスフォーミング増殖因子(TGF-β)が誘導する内皮間葉移行(EndoMT)の中間段階(Partial EndoMT)を検出できる実験系を開発。腫瘍壊死因子受容体「CD40」がPartial EndoMTの特異的マーカーであることを見いだした。
これら結果の臨床的意義を検討するため公共データベースに公開された10種類226人の固形がん患者の腫瘍組織を用いたシングルセルRNAシークエンシングのデータを再解析。がん微小環境においてPartial EndoMT段階にある細胞集団を検出し、CD40がこの集団において高発現していることを突き止めた。
腫瘍組織において血管内皮細胞はPartial EndoMTを経て、がん関連線維芽細胞(CAF)へ変容することも示された。EndoMTががんの進展において役割を果たしていることが明らかになっている。
研究グループは「EndoMTはがんなど様々な疾患の進展に重要な役割を果たすため、本研究成果によりEndoMTが関与する疾患の新たな治療法の開発への応用が期待できる」としている。