東京⼯業⼤学と群⾺⼤学、情報通信研究機構(NICT)の研究グループは、原子の周波数で時刻を刻む「原⼦時計」の時刻ゆらぎを評価するために、「⾼階アラン分散」と呼ばれる指標を新たに定義した。その合理性を数学的に解析するとともに、アラン分散を原⼦時計の時刻ゆらぎを特徴づけるパラメータを関数として記述する公式を発⾒した。
原⼦時計にもわずかな時刻のゆらぎが⽣じる。時刻ゆらぎの統計的性質には、原⼦時計の内部構造や原⼦遷移の検出⽅法などの複数の要素が影響するため、原⼦時計の多様な時刻ゆらぎを統⼀的に評価する指標が求められていた。
研究ではアラン分散を新たに定義して、数学的性質をシステム制御の数理に基づいて解析した。その結果、任意の次数の原⼦時計に適⽤可能な⾼階アラン分散を分散パラメータの関数として表す公式を見つけた。
本研究が導出した公式は、既存指標を含むすべての階数の⾼階アラン分散を合理的に⽐較することも可能にしている。具体的には、⾼階アラン分散の定義は、階数Nを2に選ぶと通常のアラン分散の定義に、3に選ぶとアダマール分散の定義に⼀致するという。
さらに、階数Nを4以上に選ぶ場合には、既存指標を⼀般化した新たな指標となる。アラン分散の公式は、原⼦時計のゆらぎを特徴づける分散パラメータの関数として、階数が異なる指標値の関係を明⽰している。
研究グループは「今後は新しい種類の原⼦時計を⾼階アラン分散に基づいて解析することによって、統計的な観点から個々の原⼦時計が持つ時刻ゆらぎの特性を明らかにしていくことを⽬指す」と意気込んだ。