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記憶関連分子が脳の神経回路を活性化する仕組み 阪大研究Gが解明 精神疾患の病態解明にも寄与

大阪大学の渥美友梨大学院生らの研究グループは21日、東京工業大学などと共同でヒト神経細胞の核内で学習や記憶につながるたんぱく質とゲノムDNAの動的振舞いを1分子レベルで明らかにしたと発表した。記憶関連分子が脳の神経回路を活性化することなどが分かっている。こうした成果は精神神経疾患の病態のさらなる理解につながるという。

これまで記憶に転写調節因子「CREB」と一緒に働くことが知られ神経疾患の原因遺伝子である共活性化因子「CBP」が重要であることが分かっていたが、どのような動的な振る舞いが必要とされるのかは不明であった。

研究グループは斜光照明顕微鏡を用いて蛍光標識したCREBとCBPを1分子レベルで可視化して時空間的な動態を解析。CREBとRNAポリメラーゼII(RNAPII)の同時イメージングに挑戦した。

その結果、神経活動が起こる前から神経細胞の核ではCBPによって転写を促進された微小領域が点在すると確認。そこには活動が起きたときに素早く遺伝子発現できるように記憶関連遺伝子が準備されていると判明した。

また、刺激が入るとホットスポットとしてCREBはCBPと共にその遺伝子のDNA配列に選択的に数秒程度の結合を繰り返し、それにより活性化型RNAPIIが集積することで遺伝子発現が開始されると分かっている。これらステップが記憶につながる分子の振る舞いであることを突き止めている。

研究グループは「本研究のイメージング手法をiPS細胞技術と組み合わせて、患者由来の細胞に応用することで、精神神経疾患の病態のさらなる理解につながる」と研究の意義を伝えた。