北海道大学などの研究グループは新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染後の肺血管内皮細胞では、若齢個体よりも加齢個体で特に強い炎症反応と血栓形成亢進が認められて重症化病態形成の要因になることを解明した。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は加齢が最大の重症化リスク因子で、致死的病態発現にはサイトカインストームと呼ばれる全身性の強烈な炎症反応や血栓形成の異常亢進の関与が知られている。
これまでの研究ではヒト重症化病態を再現するマウスモデルが確立されていなかったことなどから、若齢と高齢宿主の肺血管内皮細胞の新型コロナ感染後の細胞応答がどのように異なるのか不明のままであった。
研究グループは先行研究でマウスへの感染性を獲得したSARS―CoV―2変異株を作製。高齢マウスで重症化することを報告している。そこで、今回の研究では同ウイルスを若齢マウスと加齢マウスに感染させ、肺組織を病理組織学的に解析した。
加齢マウス肺では高度の炎症性変化と多量の血栓が観察され、COVID-19死亡例の肺所見と類似していることが分かった。感染肺から血管内皮細胞のみを単離し、その遺伝子発現を若齢・加齢間で比較解析したところ、加齢マウス肺血管内皮細胞では若齢と比べ、ウイルス遺伝子、炎症関連サイトカイン、血栓形成関連遺伝子のレベルが高いことが分かった。
研究結果により、新型コロナウイルス感染症重症化病態形成機序として肺血管内皮細胞におけるウイルス取り込み量と細胞応答の違いが加齢によって生じている可能性が示された。
研究グループは「重症化マウスでは新型コロナ感染後に肺血管内皮細胞において、より強い炎症反応と血液凝固促進応答が生じていたことから、血管内皮細胞を標的とした重症化予防法や治療法開発が期待される」とコメントしている。