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全固体電池のリチウムイオン移動を妨げる原因 NIMSが可視化 電池の性能向上に期待

物質・材料研究機構(NIMS)は18日、次世代電池として期待されている全固体電池材料におけるリチウムイオン移動の妨げとなるボトルネックを可視化する新しい手法を開発したと発表している。全固体電池の性能向上が期待されている。

全固体電池は従来のリチウムイオン電池に使用されていた有機電解液を固体電解質にすることで、より安全で、高いエネルギー密度の実現を目指した次世代蓄電池の1つ。活物質と固体電解質の界面や固体電解質内の粒子同士の界面(粒界)で生じるリチウムイオン移動の抵抗が問題の1つとして挙げられている。

これは充放電速度や利用可能なエネルギー密度の低下につながる。固体電解質には粒子と粒界が存在するが、イオン移動速度を平均情報として得る方法しかなく粒界を特定し、かつ定量的にイオン移動の速さを評価する実験方法はなかった。

NIMSは、イオンの質量分析から元素の分布を画像化する2次イオン質量分析法(SIMS)を用いて、リチウムの安定同位体である7Li(質量数7天然存在比92%)中に、試料端からイオン交換で導入した6Li(質量数6天然存在比8%)が拡散する様子を観察することで固体電解質内の粒界におけるイオン移動を定量化した。

従来の技術では固体電解質内を高速に移動する6Liの分布を画像化し、拡散の速さを定量化することは不可能であった。この研究では、冷却しながら測定する「クライオSIMS」を用いて6Liの移動速度を大幅に遅くし、6Liの分布の精密な測定が可能となった。そして粒界がボトルネックとしてイオン移動を制限している様子を観測することに成功した、

研究チームは「この手法は、リチウムイオンの拡散を直接観測できることから、全固体電池内部内に存在するさまざまな界面の中からボトルネックとなる界面を特定し、その原因解明に応用できる」と評価。「これにより全固体電池の性能向上に貢献することが期待される」としている。