三重大学と京都大学、東海大学の研究チームは糞の中に含まれるイルカのDNA情報を用いて年齢を推定する手法を開発した。研究はイルカなど野生水生動物の糞などの生体を傷つけずに得た試料由来のDNAを使って、年齢を推定する「エピジェネティッククロック解析」に初めて成功した研究成果となる。
糞などの体を傷つけない試料は、血液や皮膚などとは異なりDNAの濃度が低く、断片化しやすく、解析を阻害する物質が含まれる。さらに、水中という環境ではDNAの分解が進みやすいため、DNAを翻訳する方法が野生のイルカに使えるかさえ分からなかった。
研究では小型アクションカメラとポリエチレンチューブを持って水中に入り、イルカが排泄をしたら、その糞を採取するとともにそのイルカの撮影を行った。その後実験室にて、採取した糞からDNA抽出。2つの遺伝子領域(GRIA2、CDKN2A)を対象にメチル化率を測定した。
61サンプルの糞から抽出したDNAの内、30個体から得た36サンプルのメチル化率を調べた。得られたメチル化率と実年齢の間には相関関係が認められ、ミナミハンドウイルカの50年程度の寿命に対して、平均5歳程度の誤差で年齢を推定することに成功した。
研究チームは今後について「糞を利用した年齢推定を通して、野生動物の生態の理解が進み、動物と人類の共存につながることが期待される」としている。