東京⼯業⼤学の永嶌鮎美助教らと近畿⼤学などの共同研究により、低分子化合物を輸送する「アクアグリセロポリン(Aqp)10」をコードする遺伝⼦を複数持つ⿂類において、⼀部のAqp10たんぱく質の尿素・ホウ酸輸送活性が減弱した進化上のタイミングを明らかにした。
ヒトAqp10は⽔とグリセロールのほかに尿素とホウ酸を輸送するが、トラフグAqp10パラログであるAqp10.2bは尿素とホウ酸を輸送しないことが⽰されている。だが、どちらの輸送活性が祖先型か、また輸送基質選択性が進化の過程でいつ変化したのかは不明であった。
これらの疑問の答えを明らかにするため、遺伝子を研究するイルマズ氏らの報告を参考に選定した⾁き類(ヒト、ハイギョ)、条き類の古代⿂(ポリプテルス、スポテッドガー)、真⾻⿂類(タイヘイヨウニシン、ゼブラフィッシュ、トラフグ)について、それぞれが有するAqp10をアフリカツメガエル卵⺟細胞に発現させ、輸送活性を解析した。
その結果、⽔やグリセロール、尿素、ホウ酸を輸送する活性がこれらの⽣物種のAqp10及びAqp10.1に共通する祖先型の性質であること、また⽔とグリセロールのみを輸送する活性は条鰭類のAqp10.2のみに限定された性質であることが明らかになった。
これらの結果から、進化の過程で条鰭類のAqp10.2の尿素およびホウ酸輸送活性が減弱したことが⽰唆されている。「研究成果はさらに、他のアクアグリセロポリンの基質選択性に関する理解も⼤きく前進させると想定される」とコメントした。