文教速報デジタル版

BUNKYO DIGITAL

文教速報デジタル版

BUNKYO DIGITAL
新奇ストレス源プラズマに対する細胞応答機構 基生研など3機関が明らかに

自然科学研究機構基礎生物学研究所(NIBB)の大坪瑶子研究員らなど3機関の研究チームは、真核単細胞生物である分裂酵母にプラズマ照射を行い、細胞内でどのような応答が起きるのかを解析した。細胞分裂に関わる因子に変異が起こり、分裂せずに連結して多細胞になるとプラズマ照射に対して耐性を得ることが分かっている。

原子から電子が離れた状態であるプラズマに対する生体の応答機構についての基礎的研究は、ほとんど行われていない。今回、研究グループは、細胞レベルでの生命現象の研究において多大な貢献を果たしてきたモデル細胞である酵母の一種「シゾサッカロミセス・ポンベ」を使って、プラズマ照射に対する細胞応答の分子機構の解析を行った。

強い照射条件下で増殖可能なプラズマ耐性変異体の探索を行った。すると、細胞分裂に異常が生じ、複数の細胞が分裂せずに連結して多細胞体となった状態になる変異体が単離された。細胞分裂に関わる「Sep1」に変異が入っていると分かった。

Sep1によって発現誘導され、細胞分裂に関わる酵素群の転写を制御する「Ace2」の変異体は細胞が連結した表現型を示すことが知られている。Ace2の変異体も Sep1変異体と同様にプラズマ耐性となった。このことからSep1―Ace2からなる細胞分裂の制御系がプラズマに対する細胞応答で重要な働きをしていることが示唆された。

また、分裂酵母細胞は常温大気圧プラズマによる複合ストレスに対して、Sep1-Ace2細胞分裂制御経路とTORC1栄養応答経路という独立の2つの経路を介して応答することが分かっている。

研究グループは「研究成果は、いまだ黎明期にあるプラズマ生物学の更なる発展のための基礎となる」と評価している。