岩手医科大学の小原航教授らの研究グループは、東京大学と共同で血液と尿中に存在する患者特有のがん由来DNAの追跡検査により上部尿路上皮がん術後の再発検出が可能であることを明らかにした。血や尿のがん由来DNA検査が再発を高感度に検出できることを示した世界で初めての研究となる。
上部尿路上皮がんにおける腫瘍循環DNA(ctDNA)に関する調査は少なく、血液と尿の両方を用いて解析を行った研究はこれまでにない。今回の目的は、上部尿路上皮がんの術後経過における血液及び尿中ctDNAの変異遺伝子量の変化が手術後の再発を検出しうるかを調べることであった。
上部尿路上皮がんに対して施術した23症例を対象とし、検体の腫瘍組織からDNA を抽出、次世代シークエンサー(NGS)などによる変異解析を行った。
その結果、術後再発と非再発症例において、手術前後の変異リアル頻度(VAF)の低下率を比較したところ、尿における術前と術後2日目のVAF低下率が再発症例において有意に低いこと判明した。
術後再発におけるリスク因子を検討した結果、尿中ctDNAにおける術後2日目のVAF低下率が低い群で有意に無再発生存期間が短いことが分かった。
研究グループは「尿におけるVAF低下率が術後再発のリスク因子として同定され、ctDNAは術後再発予測に有用である可能性が示唆された」と説明している。