２０２１年８月は日本周辺域に前線が停滞、梅雨が戻ったような持続的な大雨が発生した。筑波大学などの研究チームはその要因について、熱帯と中高緯度の遠隔影響が共に作用する共変動メカニズムを解明した。この成果は亜熱帯気候力学の幕開けを告げるものであり、季節予報の精度向上が期待される。

日本周辺地域では夏季に前線が停滞し、これに伴って持続的な大雨が発生することがある。その理由として熱帯域と中高緯度域からの大気と海洋の相関関係が指摘されてきたが、両者の連動性については十分に明らかにされていなかった。

研究では西日本から東日本の広い範囲で大雨となり、記録的な自然災害を引き起こした「２０２１年８月の大雨」を対象に、熱帯と中高緯度からの遠隔影響が連動して激しい雨をもたらしたメカニズムをコンピューターシミュレーションなどによって解明した。

観測データなどを用いた解析の結果、上空に発生した停滞性の背の高い高気圧「ブロッキング高気圧」により小さな寒冷渦が朝鮮半島付近に集中するプロセスや対流圏上層の高気圧が誘起する地表付近の大気の流れが、隣り合うこれら３つの気圧を結び付ける要素になっていたことが分かった。

加えて、熱帯域内の積雲対流によっても北西太平洋亜熱帯高気圧が強められていたことが判明。こうした熱帯・中高緯度変動の共働によって日本付近で水蒸気の集中や上昇気流が生じ、豪雨が持続して発生したと結論付けた。

研究チームは「この成果は亜熱帯気候力学の幕開けを告げるものであり、このような大気の大規模な流れの生じる要因を深く検討することで、異常気象の理解や季節予報の精度向上に貢献する」としている。