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キラリティーの制御と不対電子が2つある NIMSなど3機関が「ジラジカルの合成」を世界で初めて実現

右手と左手のように鏡像が重なり合わない非対称な分子構造である「キラリティー」。物質・材料研究機構(NIMS)と大阪大学、金沢大学ナノ生命科学研究所(WPI-NanoLSI)を中心とした共同研究チームは、走査型トンネル顕微鏡の探針を用いて単分子の構造を変化させ、キラリティーの制御と不対電子が2つある「ジラジカルの合成」を世界で初めて実現した。

研究チームは、極低温かつ超高真空下で動作する走査型トンネル顕微鏡の探針を用いて、3次元のナノ構造体中にある特定の分子ユニットをトンネル電流で励起させ、その分子の構造を任意に変化させる単分子レベルの反応技術を開発した。

トンネル電流を注入する単分子内の部位や位置、更にその時の電圧などの反応パラメーターを精密に制御することにより、2つのキラリティー構造とジラジカルの計3つの構造を作り分けた。高い制御性を示す目的で、バイナリーやターナリーのアスキーコードを用いて同グループの名称である『NanoProbe GRP.NIMSc』の記録に成功した。

研究グループは「今後、この成果をより発展させ、単分子をボトムアップで合成し、新奇ナノ炭素構造体の実現を目指している」とコメント。「ジラジカルのユニットにはそのスピン状態に対応した交換相互作用が発生するため、プローブ顕微鏡の探針下で動作する究極的な量子マテリアルへの展開も期待できる」としている。