北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)の桶葭興資准教授らの研究グループは14日、「電子を輸送する」高分子―金属ナノ粒子の複合組織を設計したと発表した。さまざまなエネルギー変換システムに有用としている。
電子が移動する反応の速度を記述する「マーカス理論」に学び、2ナノメートル以内の電子輸送を能動的に起こす系を高分子の精密な合成を通して構築した。まず、3元系のヘテロ高分子を精密に合成し、これが結合した触媒ナノ粒子を作製した。
この高分子は、相転移を起こす部位、ナノ粒子と結合する部位、そして電子を授受する部位から構成される。ここで、農薬などに利用される高分子中の「ビオロゲン」分子が電子を得ると、触媒の白金ナノ粒子まで迅速に運び水素生成する仕組みだ。
プロセスとしては、まず、電子を得たビオロゲン分子近傍の高分子が収縮する。そして、 この高分子の一部はナノ粒子表面に固定されているため、電子を得たビオロゲンをナノ粒子表面へ触手のように引き寄せられる。最後にビオロゲンが電子をナノ粒子に渡した後、この高分子は伸長して元に戻る。このナノ粒子は水素生成の触媒として働く。この過程が周期的に進む。
研究グループは「高分子の相転移を用いた電子の能動輸送は、エネルギー変換系だけでなく、次世代バッテリーなど様々な先端材料にとって有用なナノシステムと期待される」としている。