筑波大学の浅野敦之教授は、ニワトリ精子の細胞内外からカルシウムを除去してエネルギー代謝と細胞機能を休止させることで受精能力を長く維持できる冷蔵保存技術の開発に成功した。家禽(かきん)の効率的な品種改良や希少遺伝資源の保存および増殖に貢献すると期待されている。
研究では何がニワトリ精子の受精能力の維持と破綻を制御しているのかを調べた。その結果、冷蔵保存したニワトリ精子の受精能力障害は、カルシウムイオンの細胞内への流入が原因と判明した。
そこで細胞内外からカルシウムイオンを除去すると、精子の受精関連機能の休止が誘導され、今までよりも長期間(3日間以上)冷蔵保存できると分かった。その理由を調べると、細胞内外からのカルシウム除去は、精子のエネルギー代謝ダイナミクスに働きかけて生理的休眠のような状態に誘導することが分かった。
浅野教授は「精子の長期受精能力維持のメカニズムを知ることは、受精にあたり雌生殖器道で待機し、排卵を待たなければならない精子の生殖戦略に迫るものと考えられ、空に活路を見いだすことが出来た鳥類の特殊な生殖メカニズムの解明につながる」と説明している。