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スパコン占有が必要なシミュレーション 慶應大研究Gが低コストで実現

慶應義塾大学のウェイ・カイジ特任助教らの研究グループは11日、40量子ビット以上の状態ベクトル型の量子コンピューターシミュレーションを実行できるボードを開発したと発表した。これによりスーパーコンピューターが必要な検証を研究室で行うことが可能になる。

40量子ビットを超える規模のシミュレーションを行うためには、16テビバイトを越えるメモリを同時にアクセスする必要があり、スーパーコンピューターを一定時間占有しなければならない。このため、多くの量子コンピューター研究者にとって大規模なシミュレーションを行うこと自体が難しいという問題があった。

課題に対応するため研究グループは書き換え可能な大規模集積回路を開発。8テラバイトのインターフェース規格「SATA」ディスクを32枚直結し、最大43量子ビットのシミュレーションを単独で実行することができる。これは400万円程度の値段で卓上に簡単に設置できる設備だという。

研究グループは量子コンピューターシミュレータ「Qulacs」を元に主要なゲート操作に相当する演算を行うハードウェアを開発。対象のシミュレーションごとに入れ替えることで、安いFPGAを用いても豊富な機能を実行することができる。

SATAディスクはスーパーコンピューターの主記憶に比べて遅いため、セクタ単位のデータアクセスの工夫や対象量子ビットが連続する場合はディスクに書き戻さなくても良いなどの工夫を行っているという。

結果として、40量子ビットのシミュレーションが3時間程度で実行できるようになった。FPGAにSATAディスクを直結したボードは、研究グループで開発したもの以外は前例がない。エッジ分野でのビッグデータの扱いなど、量子コンピューターシミュレーション分野以外での利用も期待されている。