筑波大学の島野仁教授はたんぱく質「SREBP-1ⅽ」の新たな切断酵素を発見。肝臓の脂肪酸の生合成が多価不飽和脂肪酸により抑制されるメカニズムを初めて解明したと8日に発表した。生活習慣病に対する新しい治療戦略の構築につながりそうだ。
SREBP-1ⅽは脂肪酸合成を活性化し多価不飽和脂肪酸によって抑制されるが、その仕組みは分かっていなかった。
研究グループは脂肪酸合成を担うSREBP-1ⅽの新たな切断機構と脂肪酸による切断制御を明らかにした。この際のSREBP-1ⅽの切断は⼩胞体で起こり、⼩胞体膜に存在するロンボイドプロテアーゼRHBDL4がSREBP-1ⅽの新規切断酵素であることを⾒いだしている。
この切断は飽和脂肪酸により活性化、多価不飽和脂肪酸で不活性化され、脂肪酸の種類によるRHBDL4の活性調節が⽰されていた。さらに、たんぱく質「VCP複合体」が、切断部位によって⼩胞体膜に切れ残っているSREBP-1ⅽたんぱく質を、⼩胞体から引き抜く新しい仕組みも発見した。
島野教授は「脂質ホメオスタシス機構の1つであるRHBDL4-SREBP-1ⅽ経路の発⾒は、臓器脂質の蓄積病態、すなわち脂肪毒性のメカニズムや炎症との関連の理解、さらには、メタボ病態や脂質代謝異常を基盤とした⽣活習慣病に対する新たな治療戦略の構築につながると期待される」と説明している。