東京大学の名西恵子講師らによる研究グループは8日、地域の母乳育児の状況を評価する世界保健機関(WHO)の指標「24時間思い出し法」を用いると適切な保健政策につながらない可能性があることを示した。病院による支援が適切な母乳育児につながるとしている。
母乳育児は母子の健康にとって重要であるため、母乳育児がしやすくなるような保健政策が社会に求められる。そして、そのような保健政策の改善などには、母乳で育つ子どもの割合や要支援の理由、その支援には効果があるのかといった母乳育児の状況を評価するための指標が必要だ。
そのような指針の1つとして、WHOは簡便に測定できる24時間思い出し法による6カ月未満児の母乳率を推奨している。
だが、24時間思い出し法が保健政策の立案や評価のために適切な指標であるかどうか、詳細に検証されたことはなかった。そこで研究グループは、日本全国の25カ月未満の子どものいる4247人の母親からオンラインで収集したデータを分析し検証した。
その結果、24時間思い出し法は母乳のみで育つ子どもの割合を大幅に過大評価し、病院でのケアの必要性を過少評価すると分かった。その一方で母乳育児をしたいという母親の意思の必要性を不当に重視してしまうことが判明している。
一方で研究参加者に出産直後から生後5カ月までの授乳方法を思い出してもらうと、病院での適切な支援こそが母乳育児の実践につながることが明確に示された。
こうした結果から、24時間思い出し法のみで母乳育児の実施状況を判断して保健政策を立案したり支援の効果を判定したりすることは適切ではないことが分かった。研究グループは「今回の結果は、母乳育児を保護し推進するための適切な支援と保健政策に役立てられることが期待される」としている。