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仮説「ケトン体-酪酸シャトル」提唱 東京工科大研究Gが人とケトン体の共生関係を指摘

東京工科大学の佐藤拓己教授らは、大腸管腔(かんこう)内におけるエネルギー基質「ケトン体」濃度の分析などをもとに、人の腸内におけるケトン体の存在には特別な意味があることを提唱した。人と酪酸菌が密接な共生関係にあり、これがケトン体と酪酸を介して成立しているとする仮説「ケトン体-酪酸シャトル」を提唱している。

研究グループは管腔内においてケトン体が生理的な役割を持つと想定し、大腸がん患者のデータを用いて管腔内におけるケトン体濃度を解析した。まず、健常人では血液中のケトン体濃度が0.1ミリモーラー程度であるのに対して、大腸管腔ではその3〜4倍となる0.3ミリモーラー程度であることを確認した。

一方、ステージ3以上の大腸がん患者では、がん組織内のHMGCS2が消失するため、ケトン体が不足すると考えられている。この応急処置として周囲の大腸上皮細胞が代償的にHMGCS2を強く発現させ、大量にケトン体をがん組織に供給するためがん組織内のケトン体濃度が異常に増加するとしている。

研究グループは「飢餓の状態においてこそ、ホモ・サピエンスはケトン体の供与を増やすことによって酪酸菌を優先的に保護してきた」と説明。「その見返りとして酪酸菌は酪酸を大量に大腸管腔内に供給し、氷河期をホモ・サピエンスと共に乗り越えてきたと考えられる」と分析している。

「ケトン体-酪酸シャトル」のイメージ:
ヒトは酪酸菌にエネルギー源であるケトン
体を与え、酪酸菌は宿主であるヒトに酪酸
を与えることで、⼤腸管腔内の良好な環境
を維持している