海洋研究開発機構(JAMSTEC)の石川尚人副主任研究員らは6日、人類が生態系に影響を与えた区分「人新世」において減少し続ける生物と食物網構造との関係が、提唱する新指針「統合的栄養位置(iTP)」によって明らかにできることを発表した。食料生産や水産資源の問題などに貢献できるとしている。
持続可能な地球生態系を設計するためには、生物多様性と誰が誰に食べられるかをつないだネットワークとの関係を明らかにすることが必要不可欠だ。だが、生物多様性と食物網を統合的にとらえることは難しく、これまで適切な指標はなかった。
研究ではJAMSTECが提唱した統合的栄養位置(iTP)をその指標とすることが可能かどうか、世界中の海洋・陸水生態系の解析から検討した。その結果、動物プランクトンなどの1次消費者から、シャチのようなトッププレデターまで、食物連鎖を通じて生物の量は目減りしていくことが分かった。
この減り方が急峻な場合、食物連鎖の縦方向の多様性(Dv)とiTPは低い値を示し、生態ピラミッドは横長の「富士山」のような形になった。一方、減り方が緩やかな場合、Dv とiTPは高い値を示して生態ピラミッドは縦長の「東京タワー」のようになっている。
研究チームは「今後、iTPを用いた革新的な観測から、いろいろな生態系でピラミッドの効率性や安定性を明らかにできると考えられる」と説明。「得られる成果は、食糧生産や水産資源、エネルギーといった諸問題に対して、きわめて重要な示唆を与えるものと期待される」としている。