自然科学研究機構基礎生物学研究所(NIBB)の渡辺英治准教授は、「静止しているのに動いて見える錯視」に着目して研究を行った。その結果、4色デザインの知覚速度を精度よく予測できることが分かり、足し算則による動きの情報統合が脳の普遍的な仕組みであることが示唆されたと5日に発表した。この発見は視覚情報処理への理解が期待されている。
研究グループは、シンプルな仮説を立てた。それは動きの知覚を引き起こす最小ユニットデザインがあり、その足し合わせで動きを知覚しているのではないかという考え方だ。これを足し算則と呼んでいる。
足し算則が正しいか検証するために、4色で構成されている「静止しているのに動いて見える錯視」の錯視画像を3色に分解。被験者にさまざまな3と4色デザインを提示した。これらの図案が引き起こす知覚的な運動速度を計測した。
その結果、3色から得られたデータと仮説を元にした数式で4色の知覚速度を高精度で予測できると分かった。これにより足し算則による動きの情報統合が脳の普遍的な仕組みであることが示されている。
研究グループは今後について「心理実験は多くの労力が必要となるためこれまでより慎重に検証を進める必要があったが、このような人工ニューラルネットワークの利用方法によってより円滑に研究が進展する場面もでるようになる」とコメントしている。