中央大学の鈴木宏明教授らの研究グループは、マイクロ流体工学を基に、大きさが均一かつ均質な人工細胞を製造する技術を開発した。たんぱく質を合成する均一均質な人工細胞製造の標準化が可能となり、バイオ医薬品や膜たんぱく質バイオセンサーにつながることが期待されている。
人工細胞を創るという試みは、理学的な基礎研究としてだけではなく、次世代のバイオテクノロジーの創成に向けて注目されている。だが、細胞膜となる脂質二重膜小胞(リポソーム)を均一かつ均質に作ることが困難であった。
本研究グループは2021年に、製造と操作が非常に簡単な人工細胞製造用マイクロ流路チップの開発を国際論文で報告している。この技術を応用して研究では、人工細胞としてのリポソーム中に市販の無細胞タンパク質合成系を封入。目的のタンパク質を合成するために、求められる成分や条件を特定した。
最終的には、直径10~50マイクロメートル程度のリポソーム中で、水溶性のモデルタンパク質としての緑色蛍光タンパク質(GFP)と膜タンパク質のモデルとしてのα-ヘモリシン(膜にナノポアを形成するペプチド)が合成できることを確認した。
研究グループは「この技術により、内部でタンパク質を合成する均一均質な人工細胞製造の標準化が可能となり、バイオ医薬品や膜タンパク質バイオセンサーの産業利用につながることが期待される」としている。